ジョセフ・ピラティスとその歴史

1883年、体操選手であった父と自然療法医であった母のもとでドイツで誕生したピラティスは幼少期はとても病弱で、リウマチ熱、くる病、喘息に苦しみ、自身の病の克服や身体の改善のために単なるエクササイズとは違う「健康と幸せを手に入れる」ためのボディ・マインド・スピリッツを統合させたフィジカルコンディショニングとして「コントロロジー」（後のピラティス）を考案します。1914年、イギリスでサーカスの一団として渡英中に第一次大戦が勃発、ドイツ人だったピラティスは敵国人として捕われ、マン島の収容所に送られてしまいます。この時に自分が開発していたワークアウトプログラムを他の収容者たちの健康を考え指導します。これがコントロロジーをさらに体系化していくきっかけとなるのです。かたわら看護師として捕われていたピラティスは、寝たきりで動けない患者の身体をどう強化しながら機能を改善させることができるか模索していたところ、ベッドについているスプリングを利用して動かせなかった身体をサポートとし、また負荷を与えることでリハビリとしての効果がある事を思いつきます。彼の斬新なアイデアと優秀なエンジニア脳力で開発された器具が今のマシンピラティス、ユニバーサル・リフォーマーのはじまりとなっているわけです。そして今から100年前の1918年にスペイン風邪というパンデミックが起こり世界中で5億人が感染し死者は5千人から1億人にも上ったと言われているのですが、ピラティスのワークアウトをしていた収容所の仲間は、誰一人罹患しなかったという話はとても有名でさまざまな人によって今も語り継がれています。終戦後、1926年にアメリカへ移住し1929年にはパートナーであるクララと共にNYマンハッタンでスタジオを開き、彼の「コントロロジー」を指導しはじめます。スタジオがあった建物内にはダンススクールやリハーサルスタジオがあり、多くの著名なバレリーナやダンサーたちは怪我をすると治療のためにピラティスのスタジオに通い、ダンサーたちからは「アンクル・ジョー」と慕われていたそうです。

奇跡的な回復を遂げたダンサーもいて、このコントロロジーは口コミで急速に広がり、指導は数々のアスリートやビジネスマンや医者、ダンサー、振付師、体操選手、音楽家、学生と多岐にわたり、顧客には「風とともに去りぬ」の大女優のビビアン・リーや「黄昏」のキャサリン・ヘプバーン、その他の映画スター、さらにニューヨークの富裕層達もいたそうです。この頃、多くの著名なバレリーナ、ダンサー、振付師たちがピラティスの下でセッション費の代わりにアシスタントをしながら学んでいたのですが、そのうちの5人（のち11人）がピラティスの愛弟子として「第1世代ティーチャー」ピラティス自身からトレーニングを受けた指導者または「エルダー」と呼ばれるようになっていきます。これが後に様々な流派へと分かれていく事となるのです。1967年84歳まで現役だったと言われるピラティスの死後、5人の愛弟子、第一世代の1人、ロマーナ・クリザノスカがピラティスのオリジナルメソッドを引継ぎクララと共にスタジオを継続。クララ引退後は、ロマーナが1989年まで彼女の娘と共にスタジオを運営しながら指導にあたります。1990年代にコントロロジーが「ピラティス」としてメデイアで取り上げられるようになり、アメリカ各地で普及しはじめ国外でもその名が知られていくようになります。ただピラティスもクララも器具の特許や遺言を残しておらず「ピラティス」という言葉を商標登録するかで訴訟問題がおきます。2000年に和解した後はピラティスが一般用語として世界中に広まりピラティス人口は現在、世界に1700万人と言われており、アメリカではセレブやプロのアスリートもパフォーマスの向上やコンディション調整としてライフサイクルに取り入れています。

私がウェルビーイングピラティスを
提唱する理由

ご存知の方もいらっしゃるでしょうがアメリカは医療費が大変高い国です。破産宣告する70%が医療費が払えないといった状況なのです。救急車にもお金がかかります。なので容易に病院に行くこともできず自分で自分の体調を管理するという事が当たり前なのです。また管理職や経営者になると体型がコントロールできない=自分を管理できない=仕事のできない人と見られがちです。多忙である彼らが、仕事を効率よくこなすにはパフォーマンス度も高くなければなりません。サプリを飲んだりエクササイズをして健康を維持するのは彼らにとって生活の一部なのです。初めは驚きましたが、私が渡米した1990年で既に多くの方が朝の5時からジムに通って出勤されていました。

パンデミック以降、皆さんの健康に対する意識も高くなっていますよね。100年時代と言われる今、日本においては少子化が進み、超高齢化社会、医療費の削減や不安な要素も多くなり、ストレスから体調を崩されている方も多いのではないでしょうか？これからの時代は“自分の身体は自分で守る”という意識を持って実践して行く事が大切になると思います。そして少しずつでも良いので日々継続していく事がとても重要なのです。でも一人でやっていくのはハードルが高いですよね。くじける時もあるし面倒くさくなる事もあるでしょう。私も自分だけでは3回の交通事故の後遺症からここまでの回復は出来ませんでした。素晴らしいメンター達に出会うことができ、彼らのサポートがあってこそここまでこれたのです。出会いも大切ですよね。私はこれまでの出会いのご縁にとても感謝しています。

私が提唱する、ウェルビーイングピラティスは心身ともにより良い状態に導いていくコーチングです。コーチングというと厳しいスポーツ分野の指導のようですが単にピラティスのエクササイズやスキルを指導するのではなくピラティスを通して自分の体や心にきちんと向き合い心身を整えていく事によって身体の痛みや不調、姿勢の改善はもちろん、基礎代謝を上げて太らない体作り、慢性の疲れやストレスの軽減、動きを通して身体や心に秘められた可能性を引き出し、ウェルビーイングで充実した毎日を過ごすための、そしていつまでも美しく年を重ねていけるためのライフスタイルのツールとして、またバランス感覚やコーディネーション感覚を今から高め、女性においては将来向き合わなければならない更年期障害や骨粗鬆症の予防としても普段の生活に取り入れていけるように提案しています。私自身、今も残る交通事故の後遺症の改善と体調のコンディショニングとして、自分と向き合うための大切な時間として、ほぼ毎日1時間はプラクティスを続けています。他に特別な運動は何もしていませんが、体重も1キロ前後の変動があるぐらいで、実年齢は増えても体内年齢はここ10年マイナス15歳を自然な形で維持できていますし骨密度もほぼ20代、身長も縮んでいません。今までの自身の経験を生かしながら、皆さんの健康と美のお手伝いができればとても嬉しく思います。